革新県政の会・革新市政の会

2016年6月20日

天守閣木造復元 いま急ぐべきことか。耐震改修で大切に使い、将来像は、じっくり市民的議論を 革新市政の会が名古屋城天守閣木造復元問題ついて見解

革新市政の会は6月13日、名古屋城天守閣木造復元問題ついての以下の見解を発表しました。同日、市議会各会派へ見解を届け、木造復元へ進む予算が提案されている14日からの議会で、徹底した議論が行われるよう要望しました。

 

 

名古屋城天守閣木造復元 いま急ぐべきことか、市民のくらしを守る喫緊の課題は山積。耐震改修で大切に使い、将来像は、じっくり市民的議論を

 

――名古屋城天守閣木造復元問題ついての革新市政の会の見解――

 

2016年6月13日 革新市政の会総務代表世話人会

 

1、名古屋城天守閣の木造復元について、市が行った「2万人アンケート」の結果が明らかになりました。「2020年7月にとらわれず木造復元を行う」が40.6%、「現天守閣の耐震改修工事を行う」が26.3%で、河村たかし市長が旗振りをしてきた「2020年7月までに優秀提案による木造復元をおこなう」は21.5%にとどまりました。

 

アンケート結果を素直に見れば、木造復元は、あわてずに、じっくり進めるべきということが第一位であり、それに続くのが、現状の城の耐震改修です。2020年の東京オリンピックに何が何でも間に合わせるという無謀な計画には、大半の市民がノーの意思を示したといえます。名古屋市は、この結果を尊重し、2020年の木造復元を日程にした諸計画は白紙に戻すべきです。

 

市側からは、「『2020年7月までに優秀提案による木造復元をおこなう』『2020年7月にとらわれず木造復元を行う』を合わせると60%を超えた」などという一面的な「考察」が示され、市長は計画を推進する姿勢を示しています。

 

非正規雇用や奨学金返済で苦労する若者らを応援する施策の充実や、防災対策のいっそうの推進など、市民のくらしを守るための喫緊の課題は山積しています。「人は城」という言葉もあります。名古屋市がいま力を入れるべきは、なにがなんでも2020年7月までに木造天守閣復元ありきではなく、市民のくらしを守り、豊かにする諸施策の推進をはかることだと考えます。

 

2、現在の天守閣は、戦後、市民からの多くの浄財も寄せられ建設されました。そのこと自体が、歴史的、文化的意義を持つ建築物です。鉄筋コンクリート製がいけない理由はありません。

 

耐震改修をしてもコンクリート寿命はおおむね40年しかないという見方が一方的に流されていますが、最新の補修技術等を活用していけば、さらに長期の維持が可能という指摘もあります。耐震改修をし、今あるものを最大限大切に使うことを選択肢に入れるべきです。

 

アンケート結果も踏まえ、城の将来の姿は、その間に、じっくりと市民的議論を積み重ね、合意を作り上げていくべきです。

 

3、焼失した名古屋城を復元するという構想は、夢がないわけではありません。焼失前の国宝だった当時の詳細な建築図面等が残されており、忠実な復元の根拠とされています。

 

しかし、耐震、安全性の確保という今日の社会的要請を考えれば、技術的に様々な工夫をすればするほど、それは可能な限り忠実な再現をめざしたレプリカ(模型)です。木材等、往時と同様の資材を確保することの困難さも指摘されているところです。

 

設計工事を請け負うことになる竹中工務店でさえ、その復元について「完全に史実に忠実な復元は過去の実績等の調査を踏まえて10年~20年はかかると判断しています。指定された竣工日までに残された期間は4年と4ケ月(52ケ月)であり、史実に忠実な復元を実現するには不可能といえるほど非常に厳しいものと認識しています」(同社技術提案書)と述べるなど、短期間で建設することへの危惧を表明しています。建設費用も今後増えていくことが危惧されます。公募型プロポーザル方式の問題点も、新国立競技場をめぐる混乱で国民がまのあたりにしたところです。

 

4、この間の市議会での委員会議論では、市が出した集客、収支予想に疑問が出され、委員から、第三者の意見を聴くべきとの意見が出されています。

 

木造天守閣復元に限っての収支が取りざたされていますが、名古屋城は天守閣だけで成り立っているのではありません。城郭を構成する様々な建築物、構造物、庭園等の一体的整備も欠かせないものです。

 

木造復元をめぐる一連の経過は、市長の旗振りで、性急にことが進められています。

 

仮に木造復元を検討していく場合でも、急ぐ必要はありません。市民はアンケートでも、その思いを、「2020年7月にとらわれず木造復元を行う」に最大多数の40.4%が賛同という形で示しました。冷静に、長期の見通しを持った建設、運営計画を、市民と、行政、建築、文化遺産保護、街づくり、観光、歴史等、各分野の専門家の時間をかけた議論で練り上げるべきです。

 

5、現在の名古屋城は、市民が憩える場所になっているのでしょうか。お城を景色として眺めこそすれ、どれだけの市民が足を運び、豊かな時間を過ごしているでしょうか。北側の名城公園側から見れば石垣が雑草で覆われていたり、その上は松の木が乱立していたりで、天守閣を仰ぐこともできません。二之丸庭園も荒れたままになっています。

 

庭園や、遺構、埋蔵物を含め、城郭全体を一体的に整備することにお金をかけ、文化、教育、観光施設として魅力あるものにするべきです。

 

最後に、熊本地震被害の復旧は喫緊の課題です。甚大な損傷を受けた熊本城の姿は、名古屋城の今後のあり方にも活かすべきです。

 

また、この時期に、名古屋だけに、天守閣の木造復元のための資材も人も集中するようなことは避けるべきです。名古屋城の木造天守閣復元は急がなくても、熊本城の再建を応援しようと、名古屋市民の心意気を示そうではありませんか。